今、先の見えない時代のなかで、だれもが不安を抱えて生きています。だからすぐに結果がほしいし、答えが知りたいと思っている。でも、簡単に手に入る答えなんて、その程度でしかありません。失敗して、傷ついて、まわり道して、やっとたどり着いた答えにこそ、自分にとってほんとに大切なことは何か、ということがわかる。俺自身が、そうやって「今」という場所を手に入れたから、そう思うのかもしれません。
俺はよく、生徒たちに「失敗を恐れるな」と話しますが、みんなやっぱりビビっています。特に彼らが不安に思っているのは、「失敗したら、嫌われものになっちゃうじゃないか」
「失敗したら、独りになっちゃうじゃないか」ということです。もしかしたら、あなたも同じように悩んでいるかもしれない。でも、あなたは決して独りではありません。なぜなら、あなたと同じように思っている人たちがたくさんいるのだから。
ある男子生徒の話をします。
その子は、おとなしい性格の子で、北星余市に入学したとき、教室のなかが嵐のように感じたそうです。まわりは、金髪にピアスが当たり前の派手な生徒ばかり。自分とはまったく違うタイプの人間に囲まれて、恐怖に震えながら、休み時間もいつも机にしがみついて、目を閉じてじっと辛抱していたんです。
でもあるとき、なんで自分はこんなところに来ちゃったんだろう、僕の選択は間違っていたのだろうかと思って、休み時間にふと目を開けて、嵐のなかでまわりを見渡してみた。
そうしたら、自分と同じように机にしがみついて目を伏せている生徒が何人もいるじゃないか。
そのとき、彼は気づいた。
苦しんでいるのは自分だけじゃないんだと。
じゃあ、その人たちに話しかけてみよう。
そう奮起した彼は、同じように苦しんでいる仲間たちと話すなかで、机にしがみついているだけではダメだと思って立ち上がり、気づいたらクラスをまとめる代表になっていました。
学校の行事にも積極的にかかわるようになって、やんちゃなやつらが苦手なことを黙々とやり続けた。そのうち、だれからも「あいつはすげぇな」と思われる存在にまでなったのです。
彼がここまで変われたのは、つらいのは自分だけじゃないと気づき、失敗を恐れずに行動を起こしたからです。
あなたも、主体的に行動し、失敗しても、そこからさまざまなことを学べる人間であってほしい。挫折や失敗を経験した人間は、弱気にやさしくなれるし、人間に深みがある。
俺は、現状に満足せずに挑戦を続ける人間を尊敬するし、そういう人のほうが魅力的だと思います。
