• 1月26日 家庭内暴力で苦しむ母親 in 神奈川

    ひきこもりの息子が暴れているとの相談を受け現場に急行した。
    しかし、到着してから30分、母親が連絡に応じない。

    「何か危険が迫っているのでは!?」と不安が過った。

    ドアを叩いても反応せず….
    やむなく緊急性があると判断し「強制的な立入り」を決断する。
    と、その瞬間、ドアが開き、母親が飛び出してきた。

    母親は頭から流血してパニック状態
    まずは現場に突入して暴れている息子(A君)を取り押えることしにした。

    僕らはどんなに危険な状況であっても攻撃を加えることができない。
    現場では、いつも危険と隣り合わせの対応を迫られる。

    このような場合、子どもは罪悪感を抱き、逆上をしてしまう恐れがある
    まずは母親を落ち着かせ、現場から避難させることにした。

    子どもは、興奮状態で話ができる状態ではない。
    母親に対しての「恨み、辛み」を持ち出し、話を切り上げようとしてしまう。

    僕は、「一喝」して冷静さを取り戻させた。
    今までの過去や苦しみはよく分かる。でも、どんな理由があろうとも「人を傷つけてはいけない」、「親であっても暴力は立派な犯罪だ」と彼に伝えた。

    しかし、長い年月をかけ、凍りついた彼の心には何も響かない。

    ここで彼に事の重大性を理解させ、規範意識を持たせなければ必ず同じことを繰り返えしてしまう。
    僕は、約5時間にわたり根気よく語り続けた。そして彼も徐々に冷静さを取り戻し、自らの意志で親元を離れ、変わることを約束してくれた。

    なぜ、彼が大人を信用できないのか?なぜ、大人の干渉に強く反発するのか?
    それは、大人に対しての怒りではなく「自分を理解してもらえない」悲しみの反応であると強く感じた。

    彼は、幼児期に父親を事故で亡くし、懸命に働く母親に育てられた。しかし、多感な時期に母親と接する時間が少なかった。交友関係のトラブルから小学4年生で登校拒否がはじまり、ストレスの矛先は家庭へ向いてしまった。出口の見えない不安を抱えた母親は、藁にもすがる思いで不登校専門のカウンセラーへ助けを求める。しかし、その指導は、約6年間にかけて大人が高圧的に押さえつけるものであった。登校拒否をする少年を強制的に中学や高校に行かせるも「自分を理解してもらえない悲しみ」が後の家庭内暴力を引き起こした。対応ができなくなった支援者は手を引いてしまい「大人への不信感」を強く抱いてしまった。今まで受けてきた圧力が暴力と変わり、母親を支配する。そして、ひきこもりという居場所を勝ち取ったのだ。

    ひきこもり、それは彼らができる最大の防衛策なのかもしれない。しかし、そこには心の癒しや居場所は存在せず。社会からの疎外感を抱き、問題行動に対しての罪悪感に押しつぶされてしまう。溜まったストレスは、暴力や破壊という形で発散する。そして、親も子も出口の見えない泥沼にはまり時間だけが過ぎていく。

    当事者は、問題行動の原因を特定し、過去の恨みを取り除くこと、親子関係を修復することを考えるより、まずは健全な生活を取り戻すことが先決だと思う。親が現実を直視し、まずは勇気をもって誰かに相談して欲しい。

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